抄録
【背景と目的】牛摘出角膜を用いた眼刺激性試験(BCOP法)は、無刺激性物質(GHS区分外)および腐食性・強刺激性物質(GHS区分1)を評価可能な眼刺激性代替法試験である(OECD TG437)。他方、BCOP法をはじめとする眼刺激性代替試験において、弱刺激性物質を含むGHS区分2Aと2Bを評価可能な試験系はなく大きな課題となっている。我々は、BCOP法に病理組織学的検査を併用することによる弱刺激性物質評価の可能性について検討を行ってきた。今回、約70の物質について、角膜上皮の病理所見とBCOP法の評価規準であるIVIS (in vitro irritation score)の成績より、弱刺激性物質の評価基準について検討を行った。【方法】IVIS値は常法に従い被験物質暴露による角膜の混濁度とその透過性の変化に基づき算出した。病理組織学的検査は、測定終了後の角膜を10%中性緩衝ホルマリン液で固定しHE染色を行い鏡検した。角膜上皮の病理所見は以下の基準でスコア化した。Score 0:変化なし、Score 1:扁平上皮層のみの障害、Score 2:扁平上皮層および翼細胞層の障害、Score 3:障害は基底細胞層にまで至るが、正常な基底細胞が残存、Score 4:ほぼ全ての基底細胞の障害。【結果および考察】病理組織検査のスコアとIVISを比較すると、IVISが3未満では、全ての物質がScore 0または1であり,IVISが6未満の物質のスコアも0 または1であった.以上のことから,IVISが6未満の物質についても無刺激性物質と評価出来る可能性が示唆された。