日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-194
会議情報

一般演題 ポスター
内皮細胞のパールカン発現調節機構の解析ツールとしての有機ロジウム化合物
*松崎 紘佳原 崇人吉田 映子藤原 泰之山本 千夏斎藤 慎一鍜冶 利幸
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】パールカンは内皮細胞が産生するヘパラン硫酸プロテオグリカンの主要分子種であり,内皮細胞の増殖を促進することが知られている。それゆえ,内皮細胞の傷害に起因する血管病変を理解する上で,パールカンの発現調節は重要であるが,その分子機構はよく分かっていない。我々はこれまでに,potassium tetrachloro (1,10-phenanthroline)-rhodate (Rh-Phen) が内皮細胞のパールカン発現を抑制することを見出している。本研究の目的はRh-Phenによるパールカン発現抑制機構の特性を明らかにすることである。【方法】ウシ大動脈内皮細胞にRh-Phenを処理した。mRNA発現は定量的RT-PCR,タンパク質発現はwestern blot法により検討した。【結果・考察】内皮細胞においてパールカンはcyclic AMP (cAMP) による制御を受けるため,阻害剤を用いてcAMP合成酵素であるadenylyl cyclase,およびcAMPにより活性化されるprotein kinase Aの関与を検討したが,Rh-Phenによるパールカン発現抑制への影響は認められなかった。また,Rh-Phen処理は細胞増殖を制御するp38 MAPKを活性化させたものの,p38 MAPK阻害剤処理ではRh-Phenによるパールカン発現抑制の回復は認められなかった。一方,Rh-Phenの構造類縁体を用いた検討から,パールカンの発現抑制は2,9位メチル基置換体では消失し,5位ニトロ基置換体では増強した。これは分子内におけるロジウムの求電子性に起因することが示唆された。しかしながら,Rh-Phenは求電子性物質による活性化が知られるNrf2および小胞体ストレス誘導性因子であるGRP78およびGRP94の発現誘導を惹起しなかった。以上より,Rh-Phenはこれまでに報告のない新たなパールカン発現調節機構を解明するためのツールとなり得ることが示唆された。

著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top