抄録
【背景】動物実験に拠らない化粧品の安全性評価法の確立において、動物を用いない皮膚感作性評価法の開発は喫緊の課題であり、これまでに皮膚感作性のAdverse Outcome Pathway(AOP)の各ステップに対応する複数の試験が報告されている。
SH testは、廣田ら1)によって報告された細胞膜表面SH基の変動を指標とした in vitro 皮膚感作性試験法であり、感作誘導初期のタンパク結合を評価する試験法として注目されている。今回、株式会社コーセー、ポーラ化成工業株式会社において既報の25物質についてSH testを実施し、本試験の技術移転性を検証した。
【方法】被験物質を2時間曝露させたヒト単球細胞株THP-1の細胞膜表面SH基を蛍光標識し、その変化をフローサイトメトリーを用いて評価した。溶媒対照に対するSH基の変化率RFIが15%以上である時に陽性判定とした。本検討では、コーセーおよびポーラ化成にてLLNA陽性物質(18品)及びLLNA陰性物質(7品)の計25物質について試験を実施し、文献結果と比較した。
【結果、考察】文献との一致率はコーセーが76%、ポーラ化成が84%であった。一方、LLNA結果との一致率は資生堂が88%であったのに対し、コーセーが72%、ポーラ化成が80%であった。本検討の結果、LLNA陽性物質における予測性および施設間の一致率は良好であり、SH testは再現性の優れた試験法であることが確認できた。その一方で、Lactic Acidは曝露時のpH変化の影響によって結果が異なる傾向が認められたため、その要因について現在検討中である。
【参考文献】1)Hirota.M, et al., Toxicol. In Vitro. 27, 1233-1246(2013)