日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-87
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優秀研究発表 ポスター
ケラチノサイトを用いた個人レベルでの薬物性肝障害の予測を目指した検討
*平島 梨夏藤原 亮一伊藤 智夫
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抄録
[目的] 薬物性肝障害は用量非依存的に認められる場合が多いことから、その発現には個人差が存在すると考えられている。従って、薬物の安全性評価のみならず、ある種の薬物に対して著しく高い反応性を示す個人を特定するシステムの構築が急務である。スティーブンス・ジョンソン症候群や乾癬に代表されるように、表皮角化細胞(ケラチノサイト)は多様な副作用が認められる組織であり、ケラチノサイトが肝毒性系薬物に対し肝臓と似た応答性を持つことが示されれば、ケラチノサイトを用いた個人レベルでの薬物性肝障害リスクの予測が可能となる。そこで本研究では、ケラチノサイトの肝毒性系薬物に対する反応性を検討した。
[方法] ヒトケラチノサイト (HaCaT) 及びマウス初代ケラチノサイトを23種類の肝毒性系薬物で処置し、S100 calcium-binding protein A (S100A) 8, S100A9, interleukin (IL)-1βを含む5つの薬物性肝障害関連遺伝子のmRNA発現量を定量した。また、リポ多糖を投与して作成した薬物性肝障害中及び高リスクマウスより単離したケラチノサイトを用い、薬物性肝障害関連遺伝子の発現を評価した。
[結果および考察] ヒト及びマウスのケラチノサイトにおいて、ピオグリタゾンを含む多くの肝毒性系薬物の処置による薬物性肝障害関連遺伝子の誘導が認められた。肝障害高リスク群のマウスから得られたケラチノサイトではIL-1βの発現量はコントロール群に比べ有意に高かった。コントロール群ではピオグリタゾン処置によるIL-1βの誘導は認められなかったのに対し、中・高リスク群ではIL-1βの著しい誘導が認められた。以上の結果から、ケラチノサイトは肝毒性系薬物に対し肝臓と似た応答性を示すことが明らかとなった。薬物投与前に患者のケラチノサイトにおける薬物性肝障害関連遺伝子の発現や誘導能を調べることで、薬物性肝障害が発症するか否かを個人レベルで予測することが可能になると考えられる。
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© 2016 日本毒性学会
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