抄録
【背景】幼若動物を用いた非臨床安全性試験ガイドラインでは、特定の器官・機能への影響を検討する場合には片性での評価も可能と記載されている。しかしながら、眼科領域では実験動物の性差に関する知見が少ないことから片性使用の科学的な妥当性は示されていないのが現実である。本検討では眼科用医薬品の非臨床試験において汎用されているウサギであるDutch belted品種(Dutch)の眼球及び眼周辺組織について、特に幼若動物における解剖学・組織学的観点から性差の有無を検討した。
【方法】Dutchの雌雄について、性成熟前後の3つの週齢群(6、13、及び20週齢)の眼球、眼瞼及び涙腺を生産施設から入手した。眼球パラメータとして重量並びに容積(眼球、水晶体、及び硝子体)、直径(眼球、角膜、及び水晶体)、眼軸長、角膜の高さ、及び水晶体の厚さの計測を行った。また、眼球、眼瞼、及び涙腺のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本を作製し、光学顕微鏡で性差の有無を観察した。
【結果】眼球パラメータはいずれの項目についても雌雄ともに各週齢で同程度の値を示した。眼球パラメータの成長率は性別間でほぼ同じであり、6-13週齢間における成長率は13-20週齢間における成長率よりも概して高値を示した。また、HE染色標本の観察において眼球の角膜、虹彩、及び網脈絡膜を含む各組織、眼瞼のマイボーム腺、及び涙腺の組織構造に性差は認められなかった。
【結論】本検討で、6-20週齢のDutchの眼球及び眼周辺組織において解剖学・組織学的な性差は認められなかった。本結果は、幼若齢Dutchを用いる非臨床眼毒性試験を実施する際の片性使用を科学的に支持する基礎データのひとつとなり得る。