日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S15-3
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シンポジウム15 日本毒性病理学会合同シンポジウム:腎臓の毒性病理とバイオマーカー
イヌ及びサルにおける腎臓の毒性病理変化とバイオマーカー
*甲斐 清徳
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抄録
腎臓は糸球体及び各種尿細管上皮からなるネフロンを最小機能単位としている。特に近位尿細管上皮は生体必須物質の再吸収と異物の尿細管分泌を担う細胞であり、様々な薬剤の急性腎障害における組織傷害の多くが近位尿細管に観察される。腎毒性の非侵襲性バイオマーカーとして血中の尿素窒素(UN)やクレアチニン(CRE)が従来から測定されているが、非臨床安全性試験で腎臓に組織傷害がみられるにも関わらず、これら血中バイオマーカーが異常値を示さない事は少なくない。血中UNあるいはCREに加え、尿中の新たなバイオマーカーとして、ラットを用いた検討結果を基に安全性予測試験コンソーシアム(Predictive Safety Testing Consortium: PSTC)から、総タンパク、β2-マイクログロブリン、シスタチンC、Kim-1、アルブミン、クラスタリン、Trefoil Factor 3が急性腎障害の感度及び特異性が高い新規バイオマーカーとして提案され、FDA、EMEA及びPMDAにおいても同様の認識がされている。一方、イヌあるいはカニクイサルなどの非げっ歯類においては、これら新規バイオマーカー測定が抗原抗体反応を用いることから、適用できる測定系が限られており、その有用性の検討が十分に行われていない。また、個体差、日間差などが大きい事もそれらバイオマーカーの有用性の判断を難しいものにしている。今回、イヌでは主にゲンタマイシンによる尿細管傷害及び関連病変と尿中バイオマーカーの変動を比較検討すると伴に、カニクイサルではゲンタマイシン、シクロスポリン、シスプラチン、ドキソルビシンあるいはアンホテリシンBで誘発した種々の急性腎障害モデルにおける病変(近位尿細管上皮の変性・壊死、遠位尿細管の拡張、尿細管上皮再生、尿円柱、石灰化、細胞浸潤など)と尿中バイオマーカーの変動との関連性について解説、総括する。
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© 2016 日本毒性学会
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