日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-1
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シンポジウム16 UGT研究の最前線~食品から医薬品、動物からヒトまで~
異物解毒獲得における生物学的戦略:UGTの分子進化と多様性を中心に
*井柳 堯
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抄録
生体内に取り込まれた低分子異物の大部分は吸収、代謝、排泄の運命をたどる。これらの過程には、P450を代表とする酸化反応を触媒するPhase I酵素, 抱合反応を主とするPhase II酵素、吸収と排泄に関わるトランスポーターが関与している。 代謝酵素には遺伝子ファミリーが存在し、それぞれの分子種は植物が産生する毒性の高い二次代謝物に対する生体防御の機構として進化してきたと考えられている。真核生物の進化についての仮説として、共生説と膜進化説が提唱されているが、真核生物がいかにして代謝酵素の多様性を獲得してきたかは、異物代謝に関連して大変興味深い課題である。生物が代謝酵素の多様性を作り出す戦略は、祖先遺伝子のコピーの増加による重複とその後の変異の積み重ねによって異なる機能をもった関連遺伝子をつくりだすことにある。本シンポジウムでは、真核生物のもつ異物代謝酵素群を原核生物由来酵素系と比較することにより、その進化過程をそれらの機能と構造を基盤に、P450とUGTについて考察したい。とくに、真核生物UGTにはP450に見いだされない分子多様性を生み出すUGT1遺伝子複合体が存在する。この遺伝子から産生される分子種においては、UDP-グルクロン酸が結合する共通領域の異常により複数個の分子種が同時に異常をきたす。また、小胞体型P450への電子伝達は、植物のフェレドキシン還元酵素(FAD)とバクテリアのフラボドキシン(FMN)が融合したP450還元酵素(FAD-FMN)が担い、50種類のP450すべてに電子を供給している。本酵素は単一遺伝子により供給されることから、この異常により小胞体型P450のすべてに機能異常をきたす。加えて、P450とUGTは小胞体膜に非対称に結合しており、化合物によっては酸化と抱合反応が連続して起こることから、これらの遺伝子疾患についても毒性学と関連して考察したい。
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© 2016 日本毒性学会
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