日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S18-1
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シンポジウム18 日本中毒学会合同シンポジウム:一酸化炭素中毒の最前線:シグナル伝達物質としてのCOと中毒・後遺症の再考察
ヘムオキシゲナーゼ誘導の毒性学的意義について
*吉田 武美
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抄録
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、ヘムをビリベルジン(還元されてビリルビンに)、一酸化炭素、Fe2+に酸化的に分解する酵素である。1968年Tenhunenらにより本酵素が小胞体に存在し、しかもNADPHと分子状酸素が必要であることから、当初シトクロムP450との区別が問題となった。その後東北大グループにより本酵素はヘムとの親和性が極めて高く、ヘムを結合し、自己触媒的に酸化的分解をすることが証明された。HOはその発見初期にはヘムにより誘導され、フィードバック調節が存在し、その後コバルトなど金属による誘導が明らかにされ、かつHOの誘導とP450量の減少の逆相関が認められ、その面からの研究が進められた。その後熱ショックタンパ質HSP32がHOであること、さらにストレス応答はじめ様々な条件で誘導され、誘導機構がNrf2-Keap1の支配下にあることが明確にされ、急激な勢いでHO-1誘導とその調節があらゆる臓器で研究されてきている。毒性学的には、化学物質の侵襲に対して、HO-1誘導を通して、細胞を防御すると考えられる。ビリルビンは抗酸化物質として、一酸化炭素もまた防御物資として微小環境の調節に寄与する。さらに、Nrf2の制御化にあることから、HO-1誘導と同時に、GSH合成系、抱合系酵素など数多くの防御応答を伴っていることになる。現在生体で産生される一酸化炭素、一酸化窒素、さらに硫化水素までが、生体機能の調節因子として重要な意義を有していることが明白になっている。その先端にあったのがHO-1によるヘムの分解産物としての一酸化炭素である。この関連を毒性学的な面から話題提供したい。
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© 2016 日本毒性学会
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