抄録
米国食品医薬品局(FDA)の要求事項となる前臨床試験データの電子標準化(SEND)は申請者である製薬企業のみならず,日本国内の受託試験施設(CRO)にとっても緊急性の高い課題である.当然ながら製薬企業はCROの「SEND対応レベル」を委託条件のひとつとし始めている.しかし,SENDはあくまでFDA申請者である製薬企業が主体となるべきものであり,CROはスポンサーごとに異なるSEND対応レベル,要求事項を満たす必要がある.我々はスポンサーからの様々な要求に柔軟に対応すべく,2014年にSENDのCDISC Registered Solutions ProviderであるPDS社と提携し,PDS社とのパートナーシップによるSEND共同サービス体制を構築した.Registered Solutions Providerとは,CDISCに公式登録されている(登録できる実力のある)専門機関であり,現時点で SENDのRegistered Solution Providerは世界で10社程度しか登録されていない.
我々はSolution Provider型CROとして,受託試験のSENDサービス(SENDデータセット,Define.xml,Study Data Reviewer's Guideの作成)を開始し,2015年11月に日本のCROとして初となるFDAの電子予備申請通過に成功した.また,これに引き続き連続してFDA電子予備申請に成功し,十分な成功実績とノウハウの蓄積ができた.FDAは不備のあるSENDデータセットは直ちに差し戻すと明言しており,事前にSENDデータがFDAの電子審査を通過できることを確認することは極めて重要である.従って,FDAの電子予備申請通過成功は,我々におけるSEND対応がFDAで通用することを事実として証明したことになり,今後の日本のCROビジネスモデルとして重要な意味を持っている.
本講演では,イナリサーチにおけるFDA電子予備申請通過成功の経験から,CRO委受託試験のSEND対応における課題とその対策について紹介する.