日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: W4-4
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ワークショップ4 医薬品リスクのコミュニケーション
漢方のリスク・コミュニケーション:現代日本のリスク認知とリスク管理を通した医療と福祉・ケアに関わるリスク分析
*田野尻 哲郎
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抄録
 世界リスク社会(Beck 1986)である現代世界社会における、リスク認知とリスク管理に基づくリスク・コミュニケーションは、複雑性の縮減メカニズムとしての信頼を作り出す(Luhmann 1973)社会的基盤である。しかし 2010 年代日本の医療と福祉・ケアには、リスク・コミュニケーションの不全状況がある。これは、米国におけるリスク・コミュニケーションの参照軸である「科学」と「法」(Jasanoff 1997)に加え、日本では「文化・スピリチュアリティー」が重要な参照軸となっている(Tanojiri 2015)ことが、一般に理解されていないことによる。 このことが現代日本における専門家と市民のリスク認知とそれに基づくリスク管理を混乱させ、リスク・コミュニケーションの不全を齎している。
 薬剤師は、医療と福祉・ケアに関わるリスク・コミュニケーションの成立に、医薬品・化学物質リスク管理の専門家として関与しなければならない。2010 年代日本の医療と福祉・ケアのリスク・コミュニケーション不全状況を打破して、医療と社会福祉に関わるリスク・コミュニケーションを成立させるためには、まずリスク・コミュニケーションの基礎となるリスク認知とリスク管理の現状を調査しなければならない。就中、漢方薬剤に関わるそれは、「文化・スピリチュアリティー」軸が重要な地位を占めるだけに、当該リスク・コミュニケーションの特徴をよく顕在化させる、と予想される。
 本講演の目的は、漢方のリスク認知とリスク管理を通した医療と福祉・ケアに関わるリスク・コミュニケーションへの分析によって、現代日本のそれら総体を検討することである。この目的を、薬剤師と一般市民の漢方薬剤に関するその現状に関する調査と、鍼灸師と一般市民に関する同様な調査(田野尻ら 2016 年)の結果と比較することで達成する。
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© 2016 日本毒性学会
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