日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-13
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一般演題 口演
魚油摂取はFXRシグナル欠損に起因する脂肪性肝疾患を改善する
*宮田 昌明新野 耕平木下 智貴杉浦 義正
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抄録
【目的】脂質代謝の調節に関与する核内受容体farnesoid X receptor (FXR) の欠損マウスは,肝肥大が認められ,肝内に脂肪が蓄積し,肝障害マーカーのレベルが高い。このため,Fxr欠損マウスは,肝機能障害を有する脂肪性肝疾患のモデルであると考えられている。一方魚油中の主成分のn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)は脂質代謝に影響を及ぼし肝臓,血中の脂質レベルの増加を抑制する作用があるとされる。そこで本研究ではFxr欠損マウスと野生型マウスを用い魚油摂取による効果を比較することで、魚油がFxr欠損により生じる脂肪性肝疾患を改善するかどうか,またその作用機序について明らかにすることを目的とした。
【方法】12~16週齢の雌性Fxr欠損マウス及び野生型マウスに2%魚油+2%コーン油含有精製飼料(魚油群)あるいは4%コーン油含有精製飼料(コントロール群)を4週間にわたり与えた後,血液ならびに肝臓を採取した。肝臓中の脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーで、脂質、肝障害マーカーは市販キットで測定した。
【結果・考察】魚油群のFxr欠損マウスはコントロール群と比べ肝肥大の指標である肝体重比が有意に低値を示し,野生型マウスのレベルまで低下した。野生型マウスでは両群間で差異は認められなかった。肝障害マーカーであるALT,ALPレベル及び肝内総胆汁酸レベルが魚油群のFxr欠損マウスで低値を示し,そのレベルは野生型マウスと同レベルまで低下した。野生型マウスでは両群間で差異は認められなかった。魚油群のFxr欠損マウス及び野生型マウスの肝内脂肪酸中のn-3 PUFA比率はコントロール群と比較して有意に高値を示し,そのレベルは同程度だった。コントロール群のFxr欠損マウスは炎症性サイトカイン、繊維化関連遺伝子、酸化ストレス関連遺伝子のmRNAレベルが高値を示すが、魚油群で酸化ストレス関連遺伝子の有意な低下と転写因子のPparα, Shpの有意な増加が認められた。以上の結果より,魚油成分はFXRシグナルの欠損を補填し、肝機能障害と脂質代謝異常を改善することが示唆された。
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© 2017 日本毒性学会
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