日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-36
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一般演題 口演
環境化学物質ビスフェノールAによるNrf2活性化機構の解析
*大黒 亜美山中 秀剛小林 之乃今岡 進
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抄録
NF-E2 related factor 2 (Nrf2)は抗酸化因子や薬物代謝の第I、II、III相酵素などを転写誘導することで酸化ストレス耐性やデトックス作用を促進する。近年では、一部のがん細胞においてNrf2が恒常的に活性化しており、これががん細胞の酸化ストレスや抗がん剤に対する耐性を増強させることが報告されている。本研究では、環境化学物質であるビスフェノールA(BPA)がNrf2発現量をタンパク質レベルで増加させ、その下流因子であるHO-1及びMDR1 mRNAの転写誘導を促進することを明らかにした。Nrf2抑制因子であるKeap1は、そのシステインのチオール基がラジカルによって酸化されることで活性が低下し、Nrf2分解が抑制されることが報告されている。そこで、BPAが細胞内の活性酸素種及び一酸化窒素の量に与える影響を検討した。その結果、ヒト肝癌細胞(Hep3B)において、BPAは細胞内の活性酸素量に影響を与えない一方で、一酸化窒素量を増加させた。さらにBPAによるNrf2発現量の増加は一酸化窒素合成酵素阻害剤L-NMMAによって抑制され、Nrf2発現量は一酸化窒素供与体によっても増加することが示された。またBPAによるこれらの作用は、BPA結合タンパク質であるエストロゲン受容体を介さないことが示された。さらにBPA類縁体を用いた検討により、BPAの構造の二つのメチル基がこれらの作用に重要であった。本研究によりBPAは、細胞内の一酸化窒素を増加させることでNrf2発現量を増加させることが明らかとなり、細胞のデトックス作用の促進に働く可能性が示された。
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© 2017 日本毒性学会
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