日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-224
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一般演題 ポスター
カニクイザルの運動量及び体温の同時測定:体内埋め込み式運動量計測装置 nano tag® の有用性評価
*岸田 知行本川 佳幸小林 一男田村 啓
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抄録
【背景・目的】実験動物の運動量あるいは体温は,薬物の中枢神経系作用などの評価において,毒性学的又は行動薬理学的に極めて重要な指標である。特に,ヒトにより近い動物種であるサルにおける情報は,ヒトへの安全性・有効性を評価する上で有用となる。一方,動物福祉の観点からサルを用いた検討は,より低侵襲性の評価系が望まれている。本検討では,比較的安価で,マウスでも適用可能な小型の体内埋め込み式運動量計測装置nano tag(キッセイコムテック(株),(株)アコーズ)を用い,カニクイザルの運動量及び体温の同時測定を検討した。また,nano tagの皮下埋め込み後の回復性及びジャケット装着における非侵襲的条件下での検討も実施した。【方法】テレメトリー送信機埋め込み済みのカニクイザルを用いた。nano tagをジャケット装着あるいは皮下に埋め込み,体温と運動量を14日間連続測定し,nano tagとテレメトリーデータの比較評価を試みた。また,体温については,赤外線サーモグラフィーで得られた体表温度と比較した。【結果・考察】nano tagで取得した運動量の計測パターンは,テレメトリーシステムとほぼ一致した。また,nano tagのジャケット装着及び皮下埋め込み条件下での比較では,両者の運動量は一致した。体温については,テレメトリー(深部体温)>nano tag(皮下埋め込み)>nano tag(ジャケット装着)を示した。皮下埋め込みの温度は,赤外線サーモグラフィーの測定値と同等であり,体表温度を示した。また,nano tagの温度推移は,深部体温の変化と概ね一致した。nano tagの皮下埋め込み手術後の回復性については,運動量で術後3日目,体表温度で7日目に回復がみられ,テレメトリーデータには影響はなかった。これらの結果から,nano tagはジャケット装着で非侵襲的に,皮下埋め込み条件では低侵襲的に運動量及び体温の連続計測が可能と考えられ,カニクイザルでのnano tagの有用性が確認された。中枢神経系薬剤投与によるnano tagの測定結果についても報告する予定である。
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© 2017 日本毒性学会
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