日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-271
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一般演題 ポスター
ポリサルファイドモデル化合物Na2S4は1,4-NQ曝露によるPTEN/Akt/CREBシグナルの活性化を抑制する
*安孫子 ユミ新開 泰弘鵜木 隆光広瀬 玲子上原 孝熊谷 嘉人
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抄録

[目的] 先行研究において、環境中親電子物質である1,4-ナフトキノン (1,4-NQ) はセンサータンパク質であるKeap1およびHSP90を親電子修飾することで、それらの応答分子である転写因子Nrf2およびHSF1を活性化することを明らかにしてきた。本研究は、センサータンパク質としてPTEN、その応答分子であるAktシグナルに注目した。一方、ポリサルファイドは求核性が高いために1,4-NQを捕獲して、反応性の低い1,4-NQ-イオウ付加体を形成することが考えられる。そこで、本研究では初代マウス肝細胞 (PMH) を用いて、1,4-NQによるPTEN-Aktシグナルの活性化におけるポリサルファイドの関与を明らかにすることを目的とした。
[結果・考察] 1,4-NQ曝露で見られた濃度依存的な細胞死、細胞内タンパク質およびPTENの1,4-NQ修飾はNa2S4との同時曝露で抑制された。1,4-NQは10 µM曝露をピークにAktおよびその下流であるCREBのリン酸化を亢進し、さらに高濃度ではそれぞれのリン酸化を抑制した。1,4-NQと10 µM もしくは100 µM Na2S4との同時曝露では、その活性化ピークが20 µMもしくは40 µM1,4-NQ曝露であり、1,4-NQによるPTEN-Akt-CREBシグナルの破綻の閾値が高くなった。本条件下において、培地中から1,4-NQ-イオウ付加体が同定された。これらのことから、Na2S4は1,4-NQと反応してイオウ付加体を形成することで、1,4-NQを不活性化すると示唆された。1,4-NQ-イオウ付加体の一つである1,4-NQ–S–1,4-NQ-OHを単離・精製し、PMHに曝露すると、1,4-NQ曝露で見られた細胞死、1,4-NQ修飾およびAkt/CREBの活性化は認められなかった。以上のことから、Na2S4は1,4-NQ曝露によるPTEN-Aktシグナルの活性化を抑制することが示された。ポリサルファイドは、環境中親電子物質によるリスクを制御する一因子であるかもしれない。

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© 2017 日本毒性学会
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