抄録
国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適切に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)は、アルキル鎖の炭素数あるいはエチレンオキシド(EO)の付加モル数が異なる同族の陰イオン界面活性剤の総称であり、台所用や衣料用洗剤、香粧品等で使用されている。また近年、プロピレンオキシド(PO)を付加したポリオキシプロピレンアルキルエーテル硫酸塩(APS)や、EOとPOを付加したポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(APES)も、同様の用途で使用されているが、これらの安全性情報は限定的である。そこで今回、APSやAPESの物性や毒性情報を一部取得し、AESとの物理化学的、毒性学的同等性からAES類としての評価の可能性を検討した。
AESやAPS、APESの物理化学的特性(分子量、沸点、分配係数など)は、推算ソフト(EPI suite ver.4.1)を用いて比較し、一定の付加モル数の範囲での類似性を確認した。また、遺伝毒性はいずれも認められず、全身毒性(反復投与毒性など)は毒性影響の質や発現用量の点で同等であった。さらに、眼や皮膚に対する刺激性についてin vitro試験で評価した結果、1~2%の試験条件では、いずれも無刺激性であることが確認できた。また、環境への影響に関しては、APESを用いた水生生物毒性や生分解挙動解析の検討を行い、AESとの類似性を把握した。
以上の結果より、APSやAPESは、AES類として評価が可能であることが示唆された。