日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S12-4
会議情報

シンポジウム12 非臨床安全性評価から臨床へのトランスレーショナル臨床化学-副作用を回避する従来型検査法に加わる新規バイオマーカの有用性-
新規腎障害バイオマーカーの可能性 ~受託研究機関の視点で~
*鈴木 慶幸
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 腎障害は,医薬品開発において最も懸念される副作用の1つである.腎機能の一般的な検査方法として血中尿素窒素(BUN)及び血清クレアチニンが知られているが,感度と特異性において必ずしも必要十分なバイオマーカー(BM)とは言い難い.このような背景の中,より早期に腎障害を検出できるBMが求められており,非臨床及び臨床分野において尿中の新規腎障害BMが現在数多く報告されている.非臨床分野ではPSTC(安全性予測試験コンソーシアム)から7つ(総タンパク,β2-マイクログロブリン,シスタチンC,Kim-1,アルブミン,クラスタリン,TFF3),臨床分野ではKDIGO(国際腎臓病予後改善機構)から5つ(L-FABP, Cystatin C, NGAL, Interleukins, Kim-1)の尿中BMが提唱されており,日本腎臓学会の診療ガイドラインにも新規尿中BM測定の有用性が収載されている.しかし,臨床と非臨床分野を橋渡しする新規腎障害BMの報告は極めて少ない.そこで我々は,本邦発のBMであり日本及び欧州において体外診断薬として認可されているL-FABP(L-type Fatty Acid Binding Protein)に着目し,その有用性について検討を行ってきた.L-FABPは,腎近位尿細管に存在し,腎障害の前段階である腎微小循環障害を反映する虚血・酸化ストレスマーカーである.我々はこれまでにラット腎障害モデルにおいて,尿中L-FABPが腎組織障害の発症前から他の血中及び尿中BMよりも早期にかつ感度よく上昇し,休薬期間後の腎組織再生にともない回復することを報告してきた.本発表では,げっ歯類(ラット)と非げっ歯類(イヌ及びサル)を用いた腎障害モデルにおける尿中L-FABP及び他の新規腎障害BMの変動を比較検討し,非臨床安全性試験におけるそれらの有用性について報告する.
著者関連情報
© 2017 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top