日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S24-3
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シンポジウム24 オートファジーによる細胞死の制御
DNA損傷とオートファジー
*鳥居 暁吉田 達士荒川 聡子本田 真也清水 重臣
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抄録
オートファジーは進化的に保存された細胞内成分を分解する機構であり、飢餓時に誘導されることが知られている。オートファジーは近年、DNA損傷によっても誘導されることがわかっているが、その分子機構に関しては未解明な点がまだ多い。オートファジーの誘導に必要であるUlk1は、リン酸化により高度に制御されている。特にマウスUlk1の637番目と757番目のセリンは栄養飢餓時には脱リン酸化され、Ulk1の活性化に関わる。そこで、DNA損傷によるオートファジー誘導剤としてエトポシドを用いて、Ulk1のリン酸化の変動とそれに関わる脱リン酸化酵素の探索を行った。その結果、エトポシド刺激によりSer637は脱リン酸化されるが、Ser757は脱リン酸化されなかった。さらにp53の下流で誘導される脱リン酸化酵素PPM1Dの欠損MEFにおいてエトポシドによるUlk1のSer637の脱リン酸化が減少し、オートファジーが抑制されることがわかった。解析の結果、PPM1Dはエトポシドで発現誘導されると一部が細胞質でUlk1と共局在して結合し、Ulk1のSer637を特異的に脱リン酸化することが見出された。また、Ulk1は活性化とともに細胞質内でドット状に局在するが、PPM1D欠損MEFにおいて、そのドットが減少することがわかった。さらに、PPM1D欠損マウスの胸腺細胞の解析を行ったところ、胸腺細胞でのX線誘導のオートファジーが抑制されるともに、X線誘導の細胞死が増強することがわかった。この現象はオートファジーが抑制されることでアポトーシス促進因子Noxaが蓄積し、細胞死を引き起こすことが原因であるとわかった。このことから、DNA損傷によるオートファジーにおいてPPM1DがUlk1を脱リン酸化してオートファジーを活性化し細胞生存を助けることが明らかとなった。
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© 2017 日本毒性学会
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