日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: IL
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年会長招待講演
ナノマテリアル特にカーボンナノチューブによる肺・胸膜中皮障害と発がん性の経気管肺内噴霧投与(TIPS)試験法の開発
*津田 洋幸徐 結苟William T ALEXANDERDavid B ALEXANDERMohamed ABDELGIEDAhmed ELGAZZAR沼野 琢旬広瀬 明彦菅野 純
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抄録

カーボンナノチューブ(CNT)は炭素原子が筒状に配列した毛髪の直径の1/100,000の合成繊維である。アルミニウムより軽く、鋼鉄より強靭、銅より導電性に優れ、まさに未来を拓く素材としてリチウム電池、航空機、自動車に使用され、さらに送電線、建材等への使用も計画されている。多層CNT(MWCNT)の生産量は国内で年間約100t、世界では300tである。2020年には1000tを越すと予測されている。MWCNTはアスベストのように難分解性で吸引によって肺・胸膜等に持続性異物炎症を誘発する。多種のMWCNTの安全性評価は不可欠であるが、現状では吸入曝露試験でMWCNT-7、下記の経気管肺内噴霧(TIPS)試験でMWCNT-Nの2種に発がん性が見出されている。我々はラットを用いて吸入曝露専用設備より簡便にして安価なTIPS投与による以下の簡便な毒性・発がん性の評価方法を開発したのでその概要を示す。

❶ ラットに検体のMWCNTを10日〜2週間隔日にTIPS投与後(計0.5〜1mg/ラット)に、無処置観察期間(1〜4週)を経て肺組織の炎症性サイトカイン・ケモカインレベル、過酸化物-DNA付加体量を測定して組織障害・発癌機序を明らかにする。さらに胸膜中皮の増殖像とその因子の把握を行う。胸腔洗浄液についても同様な解析を行う。

❷ 2週間TIPS投与後無処置観察試験:2年までの経時的観察を行い、中間屠殺によって発がんに関与する早期病変を把握して試験期間の短縮を図る。

この方法によって現在MWCNT-7、MWCNT-Nを含む4種のMWCNTについて発がん性を見出している。TIPS法は今後の多種多数のMWCNTに対応出来る評価系として吸入曝露試験を補完できると考える。(厚生労働科学補助金・化学物質リスク研究事業および日本化学工業協会LRIによる)

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