日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-68
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一般演題 ポスター
亜ヒ酸による血管内皮細胞株EA.hy926細胞における線溶活性の抑制
*中野 毅高橋 勉吉田 映子恒岡 弥生篠田 陽山本 千夏鍜冶 利幸藤原 泰之
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抄録

【目的】血管内皮細胞は、血液凝固・線溶系を始めとする様々な血管機能の調節に関与しており、内皮細胞の機能障害に伴う血液凝固・線溶系の破綻は循環器障害などの重大な疾患の要因となりうる。ヒ素は世界中に広く存在する環境汚染物質であり、慢性的ヒ素曝露により循環器障害が引き起こされることが知られているが、血液凝固・線溶系へのヒ素の影響並びに毒性発現機構には不明な点が多く残されている。そこで本研究では、亜ヒ酸による血管内皮細胞における線溶系への影響及びその作用メカニズムを解明することを目的とした。

【方法】培養ヒト血管内皮細胞株EA.hy926細胞を亜ヒ酸で処理した後、細胞生存率をMTT assayで、線溶活性をFibrin zymographyで、培地中の組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)及びその阻害因子PAI-1のタンパク質量をELISA法で、t-PA及びPAI-1 mRNAの発現量をリアルタイムPCR法でそれぞれ測定した。

【結果・考察】EA.hy926細胞に亜ヒ酸(0-20 µM)を処理すると、細胞生存率の低下は認められなかったが亜ヒ酸の処理濃度に依存した線溶活性の低下が観察された。このとき、亜ヒ酸の処理濃度に依存して培地中へのt-PA分泌量が有意に減少していたが、PAI-1の分泌量に変化は認められなかった。また、t-PAのmRNAレベルは、亜ヒ酸の処理濃度及び時間に依存して有意な低下が認められた。一方、PAI-1のmRNA レベルに有意な変化は認められなかった。以上の結果から、亜ヒ酸は内皮細胞においてt-PAの発現を選択的に抑制することにより、内皮細胞由来の線溶活性を低下させることが示唆された。さらに、各種阻害剤を用いた検討により、この亜ヒ酸による内皮細胞のt-PA発現の抑制作用に活性酸素種の発生が一部関与していることが示唆された。現在、その他の作用メカニズムについても検討中である。

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