日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-84
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一般演題 ポスター
反応性代謝物と結合するタンパク質の機能変化を指標とした新規反応性代謝物検出法
*狗巻 広宣山本 結以大黒 亜美今岡 進橋爪 孝典
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抄録

新薬の開発段階や上市後におこる薬剤性肝障害は、開発中止や市場撤退を引き起こす原因の一つであり、創薬や医療の現場に多大なインパクトを与える。経験論的に薬剤性肝障害を起こす薬物の多くには、反応性代謝物(RM)の生成が認められる。そのため、GSHやKCNなどを用いたTrapping 試験や14Cや3H標識体を用いたCovalent Binding 試験が行われ、医薬候補品のRM生成ポテンシャルを低減する取り組みが行われている。生体内で生成したRMは、核酸や細胞構成タンパク質などに共有結合する。これまでに多くの標的分子が同定され、その代表的生体高分子としてProtein Disulfide Isomerases(PDI)がある。PDIは主に小胞体に存在し、新生タンパク質のジスルフィド変換反応を触媒することで正しい折り畳みを助ける酵素タンパク質である。我々はPDIファミリータンパク質(PDI, ERp57, ERp72)に着目し、RMが共有結合するか否かをPEG-maleimideを用いたゲルシフトアッセイ法で確認した。その結果、RMの生成が認められる肝障害陽性薬(FlutamideやTroglitazone)でジスルフィド形成の低下が認められ、付加体の生成が示唆された。次に、陽性薬及び陰性薬をヒト肝ミクロソームで代謝させたのち、PDI触媒活性を測定したところ、陽性薬群で触媒活性の有意な低下が認められた。そこで、種々の陽性薬及び陰性薬を用いて検討した結果、PDIの機能変化を利用したRM検出法を確立することができた。本法はこれまでにない新しいコンセプトによるRM検出法であり、医薬候補品の肝障害性リスク低減を目的とした評価系として有用であると考えられる。

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© 2018 日本毒性学会
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