日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: W7-3
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ワークショップ7
h-CLAT法
*宮澤 正明
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抄録

化学物質を安全に取り扱う上で皮膚感作性の評価は特に重要である一方で、そのメカニズムの複雑さからin vitro代替法の開発は長い間、困難とされてきた。そうした中、花王㈱と㈱資生堂は2003年1月より企業の壁を越えて共同研究を開始し、樹状細胞の活性化に着目したhuman Cell Line Activation Test (h-CLAT) の開発研究を進めてきた。h-CLATでは、ヒト単球性白血病細胞株であるTHP-1細胞をプレートに高密度で播種し、被験物質を所定の濃度で24時間暴露する。その後、細胞表面抗原のCD86とCD54に対する蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーにて発現量を測定する。溶媒コントロールに対する相対蛍光強度を算出し、CD86が150%以上、CD54が200%以上となった場合に陽性と判定する。独立した3回の試験のうち少なくとも2回以上で、CD86および/もしくはCD54が陽性になった場合、被験物質は陽性と判断する。皮膚感作性物質と非感作性物質とを識別する正確度は85%(121/142)、感度は93%(94/101)、特異度は66%(27/41)である。h-CLATは国内外の産学官の協力を得ながら、バリデーションを経て、複雑かつ重要である「樹状細胞の活性化」という現象を再現する代替法として、2016年7月29日、世界で初めてOECDテストガイドライン442Eとして収載された。すでに収載されている他の感作成立過程の現象を再現する代替法とh-CLATを組み合わせることにより、化学物質の皮膚感作性を動物実験と同等以上の精度で評価することが可能になると期待されている。日本では、2018年1月11日(薬生薬審発0111 第1号)、医薬部外品申請において、h-CLATを含む複数の代替法を組合せた評価体系により、化学物質が非感作性であることを判定できるガイダンスが厚生労働省より発出された。また、欧州においても、すでに化粧品開発に関わる全ての動物実験が禁止されているため代替法の活用は必須要件であり、化学物質登録規制であるREACHへの活用も期待される。

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