日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-115
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血管内皮細胞毒性を傷害する亜鉛錯体の構造活性相関
*藤江 智也山本 太郎山本 千夏鍜冶 利幸
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抄録

【目的】有機-無機ハイブリッド分子は,有機化合物に金属を導入したその構造から純粋な有機化合物および無機化合物では成し得ない生物活性を示す。ハイブリッド分子の細胞毒性は構成する中心金属やその脂溶性からの類推は困難であり,その毒性評価も不十分である。本研究では,亜鉛錯体ライブラリー(25化合物)から見出した内皮細胞毒性を示す亜鉛錯体bis(1,4-dihydro-2-methyl-1-phenyl-4-thioxo-3-pyridiolato)zinc(II) (Zn-06)の構造活性相関を解析した。

【方法】培養ウシ大動脈内皮細胞,血管平滑筋細胞,ブタ腎上皮由来LLC-PK1細胞およびヒト肺線維芽IMR-90細胞を亜鉛錯体でそれぞれ処理した。細胞傷害性は形態学的観察およびalamarBlue assayにより評価した。細胞内亜鉛量はICP-MSを用いて測定した。

【結果および考察】Zn-06は,その処理濃度に依存して内皮細胞,血管平滑筋細胞,LLC-PK1細胞およびIMR-90細胞を傷害した。無機亜鉛およびZn-06配位子で処理しても内皮細胞の傷害は認められず,Zn-06配位子のS原子をO原子に置換した亜鉛錯体(Zn-20)およびZn-06と同様にSおよびO原子で配位するが芳香環を持たない亜鉛錯体の処理によっても,内皮細胞の傷害は認められなかった。Zn-06は細胞内に高く蓄積したが,Zn-20で処理しても細胞内蓄積の増加は認められなかった。以上より,Zn-06は内皮細胞に高く蓄積して,内皮細胞を傷害する亜鉛錯体であることが明らかとなった。Zn-06の細胞内蓄積には,亜鉛と配位子が錯体を形成してSおよびO原子が亜鉛に配位することが必要であり,一方Zn-06の内皮細胞毒性には,その分子構造全体が必要であることが示唆される。

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