日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-130
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ラットによる多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の長期気管内反復投与試験:1年経過時点における報告
*前野 愛北條 幹坂本 義光湯澤 勝廣長谷川 悠子久保 喜一長澤 明道安藤 弘田中 和良海鉾 藤文生嶋 清美山本 行男鈴木 俊也猪又 明子守安 貴子高橋 祐次横田 理小林 憲弘広瀬 明彦中江 大
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抄録

【背景】ナノ物質の体内蓄積に伴う慢性毒性が懸念されているが、慢性曝露試験の報告は少ない。MWCNTの2年間全身吸入曝露試験(Kasai et al., 2016)と同レベルの評価が可能な慢性試験法の開発を目的として、現在、ラットによるMWCNTの2年間にわたる間欠気管内投与実験を実施している。今回は、実験開始から半年後と1年後に実施した計画解剖について報告する。

【方法】9週齢のF344系の雄性ラットを、40匹ずつ3群に分け、Taquann処理MWNT-7を0、0.125および0.5 mg/kg体重の用量で、4週間に1回、経口ゾンデにより気管内に投与した。実験開始から半年後(7回投与後)および1年後(13回投与後)に各群4~5匹ずつ解剖し、肺胞洗浄液(BALF)の分析および呼吸器の病理組織学的検索を行った。

【結果・考察】半年経過後の剖検では、肉眼的に肺全葉にMWCNTの沈着による黒色斑が広く認められた。沈着が尾側に偏る個体が多く、投与方法との関連が推測された。肺重量は両投与群で有意に増加していた。組織学的には、繊維を貪食したマクロファージの集簇とⅡ型肺胞上皮の肥大が見られた。横隔膜の中皮組織の肥厚が見られ、繊維が胸腔内に移行することが示唆された。また、BALF内の細胞数、LDH活性および総タンパク質の増加が用量依存性に認められた。1年経過時点で、肉眼的に肺腫瘍や胸膜中皮腫は観察されなかったが、0.125 mg/kg群の1例に3mm径の白色の膨隆性斑点を認め、組織学的に肺胞上皮の過形成と考えられた。その他、マクロファージの集簇やそれに関連したII型肺胞上皮細胞の反応性の過形成がびまん性に見られた。1年後の肺重量やBALF内細胞数は半年後よりも増加しており、反復投与の影響と考えられた。(厚労科研費(H27-化学-指定004)による)

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