主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
我々が考案した迅速組織透明化プロトコル(A rapid and nondestructive tissue clearing system; RAP)は、組織構造を破壊することなく透明化できることが特徴であり、これを全身骨格標本に最適化したRAP-B法を前回の大会で報告した。本研究では、RAPによる組織透明化の免疫染色への応用を検討した。
妊娠ICRマウスを深麻酔下で開腹し、胎児を採取して4%PFAに浸漬した。また、成獣マウスを深麻酔下で4%PFAにて灌流固定後、脳を摘出し、スライス標本を作製した。前処理として、胚および脳切片をPFA、Triton X-100、およびKOHを含むRAP固定液に浸漬した後、必要に応じてエチレングリコール、Triton X-100、およびKOHを含むRAP促進液に浸漬した。前処理した標本は従来手順で免疫染色を行った。抗ニューロフィラメント抗体を用いたホールマウント免疫染色では、前処理により染色性が向上し、マウス胚(E11)では前処理なしの手順と比較して、三叉神経および脊髄神経の末梢神経線維がより明瞭に描出された。脳スライス標本は、抗GFAP抗体を用いた蛍光免疫を行い、高屈折率性マウント剤に浸漬した後、共焦点レーザー顕微鏡にてディープスキャンを行った。得られたZ-スタックから3D画像を再構築したところ、厚切りスライス標本(500μm厚)であっても蛍光シグナルが全層にわたって検出され、3D画像の再現が可能であった。以上より、RAPによる組織透明化は、免疫染色に応用可能であり、従来法による免疫染色の手順にRAP固定液(およびRAP促進液)の手順を組み込むことで、組織の透明化だけでなく、抗体の浸透性や染色性が改善する効果が得られ、共焦点レーザー顕微鏡等による深部観察も可能であった。