日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-141
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十全大補湯のイヌにおける薬物代謝酵素阻害による薬物間相互作用の可能性についての検討
*篠原 祐太臼井 達哉佐々木 一昭
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抄録

【背景】漢方薬は一般的に薬効が現れるまでに長期間服用する可能性があり、その間に他の薬が併用投与される可能性があるため、薬物間相互作用の可能性を調べることは重要である。しかし、漢方薬のイヌにおける薬物間相互作用の可能性についてはこれまで調べられていない。薬物間相互作用には様々な種類が存在するが、その中で、薬物代謝において重要な役割を果たすチトクロームP450(CYP)という薬物代謝酵素阻害に関する薬物間相互作用の可能性を考慮することは、とても重要である。そこで本研究では、犬マイクロソームを用いて、獣医療分野でも有益な薬となる可能性がある漢方薬の一種である十全大補湯の、イヌにおけるCYP酵素阻害による薬物間相互作用の可能性について検討した。

【方法】以前当研究室にて健常ビーグルから摘出し、保存していた肝臓を使用して精製した犬マイクロソームを用い、十全大補湯添加の有無による、主要なCYP種(CYP1A、2D、3A)での反応速度の変化を調べ、最大反応速度(Vmax)、ミカエリス定数(Km)、阻害定数(Ki)を算出した。

【結果】Kiは、CYP1Aでは460 ± 142μg/ml 、CYP2Dでは2880 ± 2490μg/ml、CYP3Aの1’位水酸化の場合では2190 ± 1930μg/ml、CYP3Aの4位水酸化の場合では2120 ± 498μg/mlであった。

【考察】今回調べたCYP種においてはCYP1AにおけるKiが一番小さく、阻害が一番起こりやすい可能性が示された。しかし、十全大補湯の消化吸収や血中への移行などを考慮すると、 CYP1Aにおいても酵素阻害が起きる可能性は極めて低く、今回調べた主要なCYP種において、十全大補湯は酵素阻害による薬物間相互作用を起こす可能性は極めて低いと考えられた。

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