主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【背景・目的】In vitro ハイコンテント解析 (HCA) は汎用される毒性評価の1つである。In vivoへの外挿にしばしばin vitro-in vivo曝露比が用いられるが、in vivo試験で無毒性量と最小毒性量が揃うとは限らず、十分なデータを解析に利用できない場合がある。本研究では、既報を参照し無毒性量及び最小毒性量が不揃いの試験データを用いて、HCA成績からin vivo傷害性の予測に有用となる各化合物共通のin vitro-in vivo比の閾値が存在する可能性を検討した。
【方法】In vivoデータは、59化合物のマウス4日間毒性試験から得た病理組織学的検査 (心、腎、肝、胃)、最高血漿中濃度(Cmax)及び血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-24hr)を用いた。In vitroデータは、当該59化合物を曝露したHepG2細胞のHCA項目(細胞数、ROS、ミトコンドリア膜電位、細胞内Ca濃度)が対照群の10~90%の反応を示す曝露濃度(TCk; 10%刻み)を用いた。TCkとCmaxまたはAUC0-24hrの比を算出し、in vivo傷害性変化の有無との関係性をROC曲線により解析した。
【結果】無毒性量及び最小毒性量の不揃いを問わない場合、いずれのHCA項目のin vitro-in vivo比もin vivo傷害性の判別精度は低かった(ROC-AUC=~0.66; 59化合物)。無毒性量と最小毒性量が揃う化合物に限ると精度は改善し(ROC-AUC=~0.76; 8化合物)、肝傷害性を示す化合物に限るとわずかに改善を認めた(ROC-AUC=~0.84; 5化合物)。本研究では、教師データの分別をせず汎用的モデルを構築した場合は各化合物共通の曝露比閾値は得られなかったが、不揃いなデータを除き、用途を絞ることで将来的に閾値を設定できる可能性が示唆された。