日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-223
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輸送可能なヒト神経細胞プレート
*腰塚 慎之介仲山 智明鮫島 達哉北澤 智文塩野入 桃子荒谷 知行細谷 俊彦
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抄録

新薬開発においては、コストの大半を占める臨床試験に至って初めて開発中の薬剤の毒性が明らかになることがしばしばあるため、非臨床試験の段階で精度よく毒性を予測することが開発期間の短縮やコストの低減のために極めて重要である。特に、神経系に対する毒性は、動物とヒトの種差のために非臨床試験による予測が困難であり、また重篤なものが多いことが知られている。このような困難を解決し高精度な神経毒性予測を可能にする目的で、ヒトiPS細胞由来神経細胞をもちいた神経毒性評価系の開発が精力的に行われている。主な手法の一つが、神経細胞のネットワークを平面微小電極アレイ上に構築し電気活動を測定することにより薬剤応答を評価する方法である(神経細胞プレート)。このような神経細胞プレートを毒性試験を行うユーザー自身が作成する場合、iPS細胞由来神経細胞の培養ノウハウが必要になり、また培養期間の長さから大きな手間とコストがかかる。一方、プレートメーカーが神経細胞プレートを作成しユーザーがこれに試験を委託する場合は、開発中の薬剤に関する情報の漏洩などのリスクが生じる。これらの問題は、プレートメーカーの元からユーザーの元へ神経細胞プレートを輸送することができれば解決できる。ところが、神経細胞プレートは極めて繊細であるため、これまで輸送の試みはなかった。本研究では、プレートのコーティング条件や神経細胞の培養条件などを最適化することにより、輸送可能なヒト神経細胞プレートを開発した。開発されたプレートは、国内への出荷を想定した輸送試験の後においても正常な細胞特性を示し、メーカーからユーザーへの輸送が可能であることが示唆された。この技術は、ヒト神経細胞プレートをもちいた毒性試験に伴うコストとリスクの低減に寄与すると期待される。

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