主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【背景及び目的】我々は過去に、無処置動物からの頸静脈マイクロサンプリング採血(MS)により毒性評価パラメータが変動しないことを確認したが、化合物投与時の毒性評価に及ぼすMSの影響の有無に関する報告は稀である。今回、MSのラットGLP反復投与毒性試験への導入を目的に、溶血性貧血を誘発することが知られているフェナセチンをラットに4週間経口投与し、毒性評価動物からのMSがフェナセチン誘発血液毒性プロファイルに影響を与えることなく適切に評価できるか否かを検討した。
【材料及び方法】6週齢の雌性Crl:CD(SD)ラットにフェナセチン(0、300及び1000 mg/kg/日、N=5/群)を4週間経口投与し、初回及び4週間投与後にMS(50μL/匹を6あるいは7回)を実施した動物とMSを実施しなかった動物について、一般状態、体重、摂餌量、血液検査、尿検査、剖検、器官重量及び病理組織学的検査の結果を比較した。
【結果及び結論】フェナセチン投薬に起因した種々の所見がみられた。標的毒性を検出する血液学的検査及び病理組織学的検査の結果、フェナセチンの300あるいは1000 mg/kg/日群で、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット(Ht)値(MS無群のみ)及びMCHCの低値、網状赤血球数、MCH、MCVまたはRDWの高値、並びに肝臓及び脾臓におけるヘモジデリン沈着及び髄外造血、脾臓のうっ血及び被膜炎がみられた。1000 mg/kg/日群では骨髄における赤芽球系細胞の増加がみられた。なお、1000 mg/kg/日群でのMS有無群間比較では、MS有群でMCV及びMCHが有意に高値であった。MS有無群間でHt、MCV及びMCHに差がみられた原因は不明であったが、フェナセチン誘発血液毒性はMSの有無に関わらず検出できた。以上より、本実験条件下ではMSがフェナセチン誘発毒性評価に及ぼす影響は乏しく、毒性評価動物からMSを実施することは可能と考えられた。