日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-237
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製薬企業におけるマイクロサンプリングの利用状況・意識に関するアンケート調査と今後の課題
*谷山 和弘飯嶋 康祐伊藤 さやか岡山 幸誠西澤 学橋本 雅世畠中 俊吉井 一良田中 誠治三浦 慎一
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抄録

非臨床安全性試験における全身的曝露(トキシコキネティクス(TK)評価)では、特にげっ歯類においてサテライト動物が使用され、ときに多くの動物を必要としている。近年、分析機器の進歩により分析感度が向上したことで、分析に使用する試料量が削減可能となり、微量採血(マイクロサンプリング)技術がTK評価に適用されてきている。このような状況を受けて、TK評価に関する文書であるICH S3Aの質疑応答集として、マイクロサンプリングに焦点を当てた文書が作成され、2017年11月にICHにおける最終合意に到達し、2019年3月15日に国内で発出された。

マイクロサンプリングは動物数の削減や苦痛の軽減といった動物福祉への貢献や、同一個体での毒性情報と曝露情報の直接比較などの利点が謳われている一方、採血操作による毒性評価への影響や微量試料の取扱いへの懸念が挙げられている。

マイクロサンプリングはTK評価方法の一つの選択肢であり、医薬品の承認申請に用いられる試験において必須の手法ではないが、動物福祉の観点を含め将来的には毒性試験に組み込んでいくことが望ましいと考えられる。今回、マイクロサンプリングへの取り組み状況と実施に際して懸念される点を明らかにし、医薬品開発においてマイクロサンプリング技術を有効活用するために必要な情報を整理することでマイクロサンプリングの普及へ向けた情報を発信することを目的とし、アンケート調査を実施した。

アンケートは基礎研究部会加盟60社を対象に行い、44社から回答を得た。回答から、申請用試験での実施経験が既にあること、利用に際しては多岐に亘る懸念事項があること、TK評価への利用意思が多くある一方で既に非臨床試験に利用していてもTK評価へは消極的である側面もあることが明らかとなった。これらの情報を整理し、TK評価にマイクロサンプリングを広く利用していくための考察を行った。

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