日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-48E
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ラット・ウサギ・サルにおける網膜下投与の実績及び今後の課題
*坂田 恵美樺山 浩二荒木 智陽角﨑 英志
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抄録

近年、加齢黄斑変性や網膜色素変性といった失明に至る疾患に対し細胞治療や遺伝子治療への取り組みが活発であり、治療手段として、アデノ随伴ウィルスやレンチウィルスベクターなどで細胞へ遺伝子導入する研究が盛んに行われている。その投与手段の一つとして着目されているのが網膜下投与である。光干渉断層計(OCT)を用いることで投与部位に形成されたブレブの詳細を経過観察することが可能であり、予後の状態も予測することできる。これらの実験には、ラットやウサギ、またはカニクイザルが用いられることが多いが、眼球の構造には種差があり、網膜の厚さや硝子体容積には違いがあるため、網膜下投与後の眼圧への影響は動物種毎で異なる。眼圧の著しい上昇は、その動物の視覚に影響を与えかねない。特にヒトと同様に黄斑を有するサルでは、ブレブが黄斑(中心窩)の広域に形成されると視覚機能が損なわれる。網膜下への最大投与容量や手法は動物種毎に設定する必要がある。今回、我々はラット及びカニクイザルに生理食塩液を網膜下投与し、投与直後の眼圧変動やブレブ形成について検討した。ラットでは、5μLを2秒間で投与した個体で投与前と比較して最大約2倍の眼圧上昇がみられたが、5μLを1分間で投与した個体では眼圧の上昇は認められなかった。また、カニクイザルでは、50μLを中心窩から耳側約4.5 mmの部位へ投与した場合は中心窩側(鼻側)に、約6.0 mmの部位へ投与した場合は中心窩より外側(耳側)にブレブができやすい結果が得られた。これらの結果に加えて、ラット、ウサギ及びサルにおける投与実績も紹介し、動物の視覚機能に影響を及ぼさない最大投与容量などについて考察する。

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