日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-4S
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ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストによるシグナル毒性と2光子顕微鏡を用いた検出手法の開発
*平井 杏梨杉尾 翔太池中 良徳Nimako COLLINS中山 翔太星 信彦和氣 弘明石塚 真由美
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抄録

 一部の化学物質は脳内の受容体に作用する事で細胞内、細胞間における情報伝達を攪乱する“シグナル毒性”を示し、予期せぬ影響を引き起こす。特に脳機能は神経細胞やグリア細胞間の複雑なシグナルネットワークが形成されており、このネットワークの攪乱は、シグナル毒性のクリティカルなエンドポイントになり得ると考えられる。しかし、シグナル毒性を起因とする“脳機能の攪乱”は、細胞死やそれに伴う脳組織変性を伴わない場合が多く、現行の神経毒性試験法では検出不可能である。そこで、本研究では、ニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR)のアゴニストであるネオニコチノイド(NNs)およびニコチンをモデル化合物とし、体性感覚野における神経細胞の活動変化を2光子顕微鏡で検出する事で、シグナル毒性に伴う脳機能の攪乱を検出する事を目的とした。

 まず、C57BL/6Nマウスを用い、アセタミプリド(ACE)をマウスの最小毒性量である20 mg/kgとなるように経口投与し、経時的に採血を行い、LC/MSを用いてACEおよびその代謝産物の血中濃度を定量した。また、ACEを20 mg/kgおよび7.1 mg/kgとなるように経口投与し、投与1時間後にオープンフィールド試験および高架式十字迷路試験をそれぞれ行った。さらに、C57BL/6JマウスにACEを30 mg/kgおよび典型的なnAChRアゴニストであるニコチンをLD50の半分の濃度(1.6 mg/kg)となるように経口投与し、2光子顕微鏡を用いて、体性感覚野における神経細胞の活動を経時的に観察した。

 結果について、ACEのTmaxは約25分で、主要な代謝産物であるdm-ACEでは約150分であった。ACE投与の1時間後には、マウスの活動性は抑制され、不安様行動が増加した。また、体性感覚野において、ACE投与1時間後および2時間半後に神経細胞の発火頻度が減少し、同期発火が増加した。ニコチン投与直後および30分後には、発火頻度が減少傾向を示し、同期発火が増加した。本結果は、脳神経活動の変化が行動の変化の原因であることを示唆する結果であった。

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