日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-78S
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hL-FABP Tgマウスの肝障害に対する反応性の検討
*宇野 絹子美谷島 克宏龍 完次朗大畑 敬一煙山 紀子中江 大
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抄録

肝臓型脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)は、腎臓・肝臓・小腸に局在し、エネルギー産生・恒常性維持に関与している。このうち肝臓に由来する血清中L-FABPは、PSTC・SAFE-T・DILINによる国際的な共同研究から薬剤性肝障害のスクリーニングに有用である可能性が示されている。さらにヒト肝疾患患者やマウスモデルにおいて、NAFLD/NASHやウイルス性肝炎の疾患マーカーとなる可能性も報告されている。肝障害に対するL-FABP作用機序の解析は、肝障害におけるL-FABPの血中バイオマーカーとしての実用化や、新たな治療薬の創出などにおいて有用なものと期待される。本試験では10週齢雄性hL-FABP Tgマウス及び野生型のC57BL/6マウスを用い、四塩化炭素(CCl4)を単回皮下投与した。投与用量は2.5, 5, 10 mL/kgとし、投与24, 48, 72時間後に解剖し、採血及び肝臓を採取し、血清中の肝障害関連パラメーター(AST, ALT)とhL-FABPの測定、病理組織学的解析及び遺伝子発現解析を実施した。血清中AST及びALT活性は、CCl4投与後24時間で急増し、その後、減少傾向を示したが、用量による明らかな差はなかった。血清中hL-FABPは、CCl4投与後24時間から急増し、その後は減少傾向を示したが、その推移には明らかな用量依存性が見られた。病理組織学的解析では、CCl4投与24時間後から、重度の肝細胞壊死や脂肪化が認められた。hL-FABPの免疫組織化学染色では、CCl4投与によりhL-FABPが肝細胞質で陽性を示し、経時的に染色性が増強した。以上の結果より、血清中AST・ALTとは対照的に、血清中hL-FABPはCCl4投与による用量依存性を示し、肝中hL-FABP発現は経時的に増強した。現在、その他の肝毒性物質も含め、詳細なメカニズム解析を進めている。

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