日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-4
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シンポジウム10
アオコ毒マイクロシスチンLRの新奇機能性の発見
*小松 正治内匠 正太
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抄録

下痢性貝毒オカダ酸等と同様に、アオコを形成するMicrocystis属やAnabaena属のシアノバクテリアが産生するマイクロシスチンLRは、セリン・スレオニン型プロテインホスファターゼを阻害することによる急性肝毒性を示す。また、これらの化合物は、慢性曝露時に、細胞増殖を活性化することによって肝がんを誘発する発がんプロモーターとして機能することがある。我々の研究グループは、マイクロシスチンLRの肝臓選択毒性の律速分子として、肝細胞の類洞膜上に特異的に発現しているトランスポーターOATP1B1およびOATP1B3が機能し、これらのトランスポーターを介してマイクロシスチンLRが細胞内に取り込まれることを明らかにした。そして、致死濃度のマイクロシスチンLR曝露によりセリン・スレオニン型プロテインホスファターゼ活性が阻害されることにより細胞内タンパク質のリン酸化を亢進させることを報告した。また、この際にストレス応答性のp53、p38等ばかりでなく、生存シグナルのERK、AKT等も同時に活性化されることを示した。さらに最近、マイクロシスチンLRの新奇な機能として、上皮・間葉転換様の形質転換誘導能を発見した。すなわち、OATP1B3発現細胞へのMTTアッセイにおける致死濃度曝露により、培養フラスコから剥離・浮遊した細胞がアノイキス抵抗性を示し、形質転換を引き起こして再接着、伸展、増殖することを明らかにした。また、マイクロシスチンLR曝露後に培養フラスコに接着し続けた細胞も形質を変え、細胞骨格が再編され、増殖を続けることを示した。本シンポジウムでは、これらの形質転換細胞のストレス耐性について紹介し、上皮・間葉転換との関連について考察する。

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