日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S14-2
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シンポジウム14
細菌におけるバイオジェニックカルコゲンナノ粒子の生成機構
*三原 久明
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抄録

カルコゲン(周期表第16族元素)に属するセレンとテルルの化合物は一般に高い生体毒性を示す。一方、様々な細菌が、水溶性カルコゲンオキシアニオンであるセレン酸、亜セレン酸およびテルル酸、亜テルル酸を還元し、不溶性の元素状セレンおよび元素状テルルのナノ粒子を細胞内外に形成することが知られている。このようなバイオジェニックカルコゲンナノ粒子の生成は、細菌による解毒あるいは嫌気呼吸のプロセスによるものであると考えられているが、その詳細な機構については不明な点が多い。これまでに、Thauera selenatisBacillus selenatarsenatisEscherichia coli等にセレン酸還元酵素が同定されており、これらはいずれも鉄硫黄クラスターとモリブデン補因子を有するComplex iron-sulfur molybdoenzyme (CISM) ファミリーに属する酵素である。亜セレン酸還元酵素としては、Bacillus selenitireducens MLS10にCISMタンパク質が見いだされている。一方、テルル酸還元酵素については未だ報告例はない。我々は、分類学上異なる門あるいは鋼に属する細菌である、E. coliBacillus subtilisGeobacter sulfurreducensCellulomonas属細菌に注目してカルコゲンオキシアニオン還元およびバイオジェニックカルコゲンナノ粒子生成について研究を行ってきた。これまでの研究により、E. coliB. subtilisにおいてテルル酸還元に関わる酵素を突き止めるとともに、G. sulfurreducensCellulomonas属細菌における亜セレン酸の還元に関わる新たな知見を得ており、細菌のカルコゲンオキシアニオン還元戦略は、細菌種により多様であることがわかってきた。本シンポジウムでは、我々の研究を中心に、細菌におけるバイオジェニックカルコゲンナノ粒子の生成機構に関する最新の知見を紹介する。

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