日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S5-1
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シンポジウム5
海馬神経新生の傷害性に着目したインビボ神経毒性の評価
*渋谷 淳
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抄録

高次試験として取り扱われる神経毒性や発達神経毒性の評価は、毒性標的が多種・多様であり、毒性の現れ方に脳領域特異性を示す場合が多いため、標的性が不明な様々な毒性物質に対応するためには検討が多岐に及び、様々な脳領域を対象とした解析が必要となる。一方、神経発達は神経幹細胞の自己複製に始まり、神経前駆細胞の増殖・分化、移動、成熟の各段階から構成される。この神経細胞系譜が標的となる発達神経毒性では、これらの過程のいずれかが障害を受ける可能性がある。生後に間もなく形成される海馬歯状回で始まる神経新生 (adult neurogenesis) はこれらの全ての神経発達過程を包含するため、発達神経毒性物質を発達期に曝露した際に感受性を示す可能性が高い。また、成体での神経細胞の生存や維持に関わる分子機序には、神経発達における神経突起やシナプスの形成、髄鞘形成の機序と共通する部分が多い。そのため、成熟神経に対して毒性を示す物質は発達神経毒性を示す可能性がある。本演題では、最初に海馬歯状回の神経新生に着目した発達神経毒性の検出性、成熟神経毒性物質を発達期に曝露した際の神経新生傷害性について紹介する。次に、神経新生が動物の成熟後にも継続することに着目して、28日間反復投与試験のような一般毒性試験の枠組みで、発達神経毒性を含む神経毒性を広く検出する可能性について議論する。最後に、発達神経毒性の指標探索として、発現アレイ等を用いた網羅的解析により得られた分子の免疫組織化学的な発現解析結果を示す。また、神経幹細胞の遺伝子にゲノムのメチル化などのエピゲノム変化が生じると、その変化は娘細胞に受け継がれるため、正常な分化に必要な遺伝子発現が起こらず、生後の脳の高次機能に不可逆的な影響を及ぼす可能性がある。そこで、メチル化異常に着目した網羅的解析により得られた分子の発現特性についても紹介する。

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