日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: SL1
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特別講演
ストックホルム条約の目的と残留性有機汚染物質(POPs)指定の手順
*北野 大
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抄録

【条約の目的】

 ストックホルム条約とは毒性、難分解性及び生物蓄積性を有し、並びに大気、水および移動性の種を介して国境を越えて移動し、放出源から遠く離れた場所に堆積して陸上生態系及び水界生態系に有害な影響を与える物質、すなわちPOPs(Persistent Organic Pollutants)を国際的に規制する国際条約であり、2004年5月に発効した。科学的な審査は31名の専門家集団からなるPOPRC(POPs Review Committee)でおこなわれている。

【審査手順】

1) Annex D(スクリーニング段階)での審査

 締約国から物質の提案があると、残留性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性について提案書をもとに審査を行う。この場合、上記の4つの指標のどれか一つの基準が満たされないからといって、全体的な結論が否定されるものではなく、weight of evidence に基づきPOPRCでは柔軟に判断している。

2) Annex E(リスクプロファイル)及びAnnex F(リスク管理書)の作成及び審査

 Annex Eには当該物質についての発生源、有害性、環境内運命、モニタリングのデータおよび長距離移動後の現地における暴露状況などが調査の上、詳しく記述される。Annex Eの審査が終わると、次のステップAnnex Fの審査が行われる。その内容には当該物質の規制がリスク削減上有効であるかどうか、規制措置の実施が社会に与えうる影響、代替品の可能性などがあり、当該物質の規制を行うにあたり社会への影響を考慮している。

3) Annex Fの採択とCOP(締約国会議)への提案

 提案された物質をAnnex AまたはBに加えるべきか、さらに非意図的生成がある時にはAnnex Cにも加えるべきか、このほか適用除外用途などの検討を行い、これらの提案がCOPで審議され最終決定される。

【今後への期待】

 POPsをこの条約で規制するのではなく、今後は各国がこの条約の趣旨を反映した国内の化学物質管理政策を強力に実施し、ストックホルム条約はもはや不用であるという時が来るのを期待したい。

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