日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-31
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口演
マウスにおけるコリン欠乏メチオニン低減高脂肪アミノ酸食(CDAA-HF-T(-))によるNASH由来肝硬変合併肝発がんに関与するシグナル因子の探索
*煙山 紀子阿部 有加里結城 恵美宇野 絹子中根 冴渡邊 厚美谷島 克宏中江 大
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抄録

【目的】本研究は、トランス脂肪酸非含有ショートニングを脂質原料として用いた高脂肪食であるコリン欠乏メチオニン低減高脂肪アミノ酸食(CDAA-HF-T(-))によるマウスのNASH由来肝硬変合併肝細胞がんモデルの背景メカニズムに関与するシグナル因子の探索を行った。

【方法】実験は、6週齢のC57BL/6J系雄性マウスに普通食(脂質13 kcal%、麦芽、大豆油;メチオニン0.44%)・CDAA-HF-T(-)(脂質45 kcal%、トランス脂肪酸非含有ショートニング;メチオニン0.1%)を52または63週間投与して肝を採取し、病理組織学的に解析すると共に、63週の両群の非腫瘍部・腫瘍部のRNA-Seq.を実施した。

【結果および考察】CDAA-HF-T(-)群の肝臓においては、全例で巨大な腫瘤が多発し、肝細胞腺腫・肝細胞癌・血管肉腫を含む肝腫瘍を観察した。非腫瘍部では、線維化が高度に進行し、異物貪食マクロファージと思われる泡沫細胞を多数観察した。RNA-Seq.の結果をIngenuity Pathways Analysis(IPA)解析すると、非腫瘍部 vs Controlと腫瘍部 vs Controlの結果から、細胞増殖などに関連する Rho GTPases の亢進と、脂質代謝の減弱が共通して変動しているシグナルとして見出された。肝腫瘍部では、非腫瘍部と比較して、IL-8の亢進やPTENの減弱が示唆された。IL-8およびその受容体であるCXCR1/CXCR2は、CDAA-HF-T(-)投与13週より発現が増加し、63週投与の非腫瘍部においては発現の増加が続いた。一方、腫瘍部においてはIL-8の発現が亢進したが、CXCR1/CXCR2の発現は減弱した。以上より、NASH由来肝硬変合併肝発がんは、IL-8シグナルにより複雑に制御されるものと示唆された。

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