日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-7
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口演
神経芽腫SH-SY5Y細胞におけるカドミウム誘導性の小胞体ストレス/オートファジー応答とサルブリナルの細胞死への影響
*宮山 貴光松岡 雅人
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抄録

【目的】翻訳開始因子eIF2αは、リン酸化のターゲットサイトであり、小胞体(ER)ストレスシグナリングPERK経路により制御される。脱リン酸化酵素の阻害剤であるサルブリナルはeIF2αリン酸化の持続をもたらし、細胞の生存を調節すると考えられているが、そのメカニズムは明らかにされていない。今回、神経芽種由来のSH-SY5Y細胞を用いて、塩化カドミウム(CdCl2)誘導細胞死に対するサルブリナルの影響とERストレス/オートファジー応答の分子基盤を調べた。

【方法】SH-SY5Y細胞にCdCl2を1.0 μM、サルブリナルを10 μMの条件下で24時間処理した。細胞死はMTT assayで評価した。また、ERストレス/オートファジーの応答因子の定量はリアルタイムPCRおよび western blottingで評価した。オートファジーをライブイメージングするため、Cyto-ID®を用いてオートファゴソームを蛍光標識し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。

【結果】CdCl2濃度依存的に細胞生存率が減少し、サルブリナルとの併用で細胞生存率の低下は抑制された。CdCl2濃度依存的に、p-eIF2α、GRP78、p62、LC3Bはタンパク質レベルで上昇し、サルブリナルを併用処理するとさらに上昇した。CHOP mRNAは、CdCl2濃度依存的に上昇し、サルブリナルを併用処理すると上昇が抑えられた。オートファゴソームは、CdCl2単独処理で上昇し、サルブリナル併用処理でさらに上昇した。

【考察】サルブリナルは、CdCl2誘導によるeIF2αのリン酸化を持続させることで、ERストレスとオートファジーの応答を促す。一方、アポトーシスを誘導するCHOPの上昇をサルブリナル処理により抑えるため細胞死が抑制されたと考えられた。このことは、近年報告されているERストレス応答とオートファジーとの協働による細胞生存・死の決定機構の関与につながる。

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