日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-143
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ポスターセッション
質量分析法を用いたアミトリプチリンによるリン脂質症のバイオマーカー探索
*福田 幸祐渡辺 健一山田 統一郎髙山 早余只野 純宮脇 出
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抄録

【背景】薬物誘発性リン脂質症(PL)は臓器への蓄積性病変として知られ、肝臓はその好発部位の一つである。DH剤のように臨床で肝機能障害として検出されることもあるが、そこに到るまでの進展過程を反映するバイオマーカーは非常に限られている。本研究ではリン脂質症を惹起することで知られるアミトリプチリンをラットに投与し、肝臓及び血漿中のリン脂質を質量分析法にて測定し、リン脂質症の検出のためのバイオマーカー候補を探索した。

【方法】雄性6週齡のSDラットに14日間、アミトリプチリン150 mg/kg/日を反復経口投与し、肝臓と血漿を採取した。Imaging mass spectrometry法(IMS法)を用いて肝臓中リン脂質を、LC/MS/MS法を用いて血漿中リン脂質をそれぞれ網羅的に測定した。また、肝臓の病理組織学的検査、並びに血液生化学的検査も実施し、これらリン脂質の変動との相関を検討した。

【結果】アミトリプチリン投与ラットでは肝臓に肝細胞空胞化が認められた。肝臓ではホスファチジルコリン(PC)のPC(36:1)、PC(36:4)、PC(38:5)など複数のリン脂質に増加が認められ、血漿中では逆に減少が認められた。一方で、血液生化学的検査ではリン脂質の変動は捉えることはできなかった。

【結論】複数のリン脂質が肝臓と血漿中で相反する変動をしたことから、末梢血中のリン脂質の減少には肝臓のリン脂質蓄積とのなんらかの関連が考えられた。さらに血液生化学的検査との比較から、上記のPC類は、リン脂質の変動をより鋭敏に反映するバイオマーカーになる可能性が示唆された。

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