日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-47S
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ポスターセッション
化学物質による肝発がん予測のためのラットCAR活性化作用評価
*佐藤 拓海志津 怜太三浦 佳恵保坂 卓臣佐々木 崇光菅野 裕一朗吉成 浩一
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抄録

核内受容体CARは、肝に高発現し、化学物質の曝露により活性化されて異物代謝・排泄やエネルギー代謝を調節するとともに、齧歯動物では肝発がんにも関与する。したがって、CARは化学物質の毒性発現にも重要な因子であり、CAR活性化作用は毒性予測において有用な指標となりうる。しかし、培養細胞を用いたレポーターアッセイでは、CARは恒常的に活性化し、リガンド依存的な活性化の評価は困難である。そこで本研究では、化学物質の毒性試験に用いられるラットを対象として、ハイスループットかつ検出感度の高いCAR活性化評価手法の確立を目的とした。ラット初代培養肝細胞にラットCAR活性化薬を処置し、タンパク質/遺伝子多項目同時解析装置を用いてラットCAR標的遺伝子であるCyp2b1のmRNAレベルを調べたところ、40〜80倍の増加が認められ、本手法でCAR活性化の評価が可能であると思われた。そこで、ラット毒性試験結果を入手可能な約300種の評価を実施した。その結果、106種の化学物質でCyp2b1 mRNAレベルの強い上昇(10倍以上)が認められた。他方、レポーターアッセイを用いた評価系の改善も試みた。培養細胞での構成的活性化は、転写共役因子との結合が寄与すると考え、転写共役因子との結合に重要なAF−2領域の自由度を上げる目的でその直前に3つのAla残基を挿入し、さらにAF−2内のGly354をGlnに置換した変異体を作製してヒト肝がん由来HepG2細胞を用いたレポーターアッセイを行った。その結果、この変異体では恒常的な転写活性は抑制され、既知の活性化物質の処置依存的な活性化が認められた。そこで、mRNAレベルを増加させた上記化学物質を評価したところ、18物質でレポーター活性の増加が認められた。以上より、本手法を利用することで、ラットCAR活性化作用を簡便かつハイスループットで評価可能と考えられた。

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