日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-49
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ポスターセッション
小児の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の動物モデル開発のための検討
*遠藤 ちひろ安彦 由喜恵並木(野崎) 裕美青塚 三穂藤井 咲子堀本 政夫松井 豊松浦 正男
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抄録

【目的】近年,小児の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は増加傾向にあり,その一因にファストフードの普及が挙げられている.小児のNAFLDやその亜型である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)について,診断や治療のモニタリングに使用できる非侵襲性のバイオマーカーなどの研究が進められているが,動物モデルの開発も望まれている.小児NAFLDでは,肝細胞に沈着する脂肪滴のサイズは成人と同じ大滴性であるが,分布は小児(小葉周辺性)と成人(小葉中心性)で異なっている.一般的に肥満モデルとされる,高脂肪負荷食(HF)による市販の動物モデルの肝臓では,小児NAFLDとは異なり,小滴性肝細胞脂肪化がみられる.本研究では2系統のラットを用いて,ファストフードの栄養組成と類似する低タンパク質・低カリウム食(LPLP)摂取によって誘発される脂肪肝の病態を解析し,小児NAFLDの動物モデル開発の可能性を検討した.

【方法】SDおよびWistarラットを3群に分け,それぞれ普通食(対照,CRF-1),LPLP,およびHFを4週間摂取させた後剖検した.剖検時,肝臓の重量を測定し,その後組織学的に検査した.加えて血清中のLDL,HDL,アディポネクチン,およびレプチン濃度を測定した.

【結果・考察】両系統のLPLP群で,肝臓は重量が増加し,病理組織学的には大滴性の小葉周辺性肝細胞脂肪化がみられた.また,LDL,LDL/HDL比の増加に加え,レプチン濃度の増加,アディポネクチン/レプチン比の低下がみられた.これらの変化のうち特に肝臓重量と肝細胞脂肪化,LDL,LDL/HDL比はHFより顕著であった.以上の結果,LPLP摂取によるLDL等の変化,レプチン抵抗性が小児NAFLDに類似しており,脂肪肝(大滴性小葉周辺性)が市販モデルよりも短期間で誘発されることから,動物モデルとしての可能性が示唆された.

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