日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-59
会議情報

ポスターセッション
HCN阻害剤のラット網膜電図評価:長時間光刺激測定を用いた網膜における機能異常発現部位の探索
*梅屋 直久稲田 拓宮脇 出
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的・背景】我々は以前に、ヒトで視覚異常が報告され、ラットで網膜の基質的変化がみられていない化合物について、網膜の機能異常を網膜電図(ERG)測定で検出可能かを検討した。Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channel(HCN)阻害剤であるZatebradineでは、Long-Evans(LE)系ラットを用いたフラッシュERG測定で-1.0 log cd/m2·sの光刺激時にb波の後ろに特徴的な波形の変化が発現した。また、同様の波形変化は類薬であるIvabradineでも誘発された。本発表では、フラッシュERG測定でみられたHCN阻害剤に特徴的な波形変化が、長時間光刺激でのERG測定において時系列的にb波の次に現れるb-wave trough及びc波などに関与しているかを調べ、HCN阻害剤が網膜のどの細胞に影響しているかを検討した。

【方法】暗順応下でLE系ラットにIvabradineを12又は40 mg/kgで単回皮下投与し、投与後1.5時間にERG測定を行った。測定は、以前に発表したc波測定法に準じ、0.00316~3.16 log cd/m2の光刺激を5秒間で行った。

【結果】12 mg/kgでは3.16 cd/m2、40 mg/kgでは1 cd/m2以上の光刺激でb-wave troughに変化がみられた。また、12 mg/kgでは1 cd/m2以上、40 mg/kgでは0.1 cd/m2以上の光刺激でc波の減弱がみられた。

【考察】b-wave troughは杆体視細胞の反応を、c波は網膜色素上皮及びミュラー細胞の機能を反映しているとされており、HCN阻害剤であるIvabradineは、杆体視細胞及び網膜色素上皮又はミュラー細胞のいずれかの機能に影響を与えている可能性が示唆された

著者関連情報
© 2021 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top