日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-1
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シンポジウム16
「子供の毒性学:脳の発達を中心に」-イントロダクション-
*菅野 純
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抄録

 子供の脳の発達障害は、自閉症スペクトラムを始め多様であるが、増加傾向にある事が注目される(https://www.mext.go.jp/content/20200317-mxt_tokubetu01-000005538-02.pdf)。ここに示されている、年代とともに勾配が増す曲線は、遺伝要因では説明がつかず、自ずと環境的な要因がその原因であると考えられるが、その詳細は不明である。考えられる環境要因には、スマートホン、ビデオゲームなどを含む成育環境から、外来性の化学物質の影響までが含まれ、毒性学的には、外来性の化学物質の影響が問題となる。その毒性機序に関する基礎的研究及び、規制決定に関わる毒性評価手法の研究開発が、その原因解明に関ることになる。

 本シンポジウムでは、まず、脳の発達障害の成立機序について発生学的見地からの解説をいただき、次いで、発達小児分野が専門の小児科の先生方から、発達障害の臨床像とその原因究明の現状についてのご講演をいただく。更に、毒性学的観点から発生発達期マウスを用いた発達神経毒性(Developmental neurotoxicity: DNT)試験法による安全性評価についての解説を頂く。

 脳は胎生期から生後まで発達を続ける臓器であり、障害を受けた時点と機能的障害として発現される時期が異なることもある。近年の欧米、特にOECDは、「声を出す動物を用いた試験を実施しない」ことを前提に、動物実験の代替法ではなく、in vitroの試験法(声を出さない動物=魚は含まれることがある)だけを組み合わせた発達神経毒性評価体系を構築しようとしている。この様な毒性評価の方針が科学的に採用可能となるのはいつになるか、今はどの様な評価法が最適なのかを含めた、発達神経毒性の基礎研究、臨床研究、応用研究の各先生方の論議を期待するものである。

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