日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S3-6
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シンポジウム3
変異原性予測を目的とした(Q)SARの医薬品開発での必要性とメカニズムに基づく変異原性予測の事例紹介
*武藤 重治
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抄録

医薬品開発では,明らかに変異原性が予測される構造を化合物の探索初期に回避する目的や,化合物開発段階での代謝物・不純物の変異原性評価の一環として(定量的)構造活性相関([Q]SAR)が用いられることがある.特に不純物については,2006年のEMAガイドライン「Guideline on the Limits of Genotoxic Impurities」および2008年のFDAドラフトガイダンス「Genotoxic and Carcinogenic Impurities in Drug Substances and Products: Recommended Approaches」より(Q)SARの使用が推奨されるようになり,2014年のICH M7ガイドライン発効により国際的にハーモナイズされた.

変異原性予測には一般的に,ビッグデータに基づく市販の変異原性グローバル(Q)SARモデルが汎用される.予測精度向上の為に,新規データベース構築やデータシェアリングが進められているが,例えば「芳香族アミン」の様に予測精度向上が難しい化合物群も存在する.

芳香族アミン類は,医薬品の合成中間体として汎用されるが,カルボン酸パーツとアミド結合で連結させて合成した医薬品候補化合物が生体内で代謝的に加水分解されることにより,Ames陽性の芳香族アミンが代謝物として生成して開発上の問題となる場合がある.

弊社では,芳香族アミンの変異原性誘発メカニズムとしてよく知られるニトレニウムイオン仮説に基づく予測モデルを構築した.弊社化合物を用いた評価では,市販予測モデルと比較して予測精度が良く,創薬初期の化合物選定に有用であることが確認された.また,ICH M7に基づく変原性予測のエキスパートレビューにあたり,これまでは芳香族アミンの変異原性の置換基効果を定性的に考察していたが,本モデルを用いた定量的指標によるサポートの可能性についても紹介したい.

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