日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-3
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シンポジウム6
医薬品等の生殖毒性試験代替法に有用なヒト由来iPS細胞株の新規開発と応用
*山本 直樹平松 範子佐々木 洋近藤 征史小島 肇
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抄録

化学物質の安全性評価において、全身毒性試験の代替法開発を促すため、経済協力開発機構(OECD)では有害性発現経路(AOP)の開発を促し、AOPに基づいた試験法ガイドライン(TG)やin silicoの開発を推奨している。ただし、生殖発生毒性試験においては開発されたAOPやTGはまだない。

一方、医薬品規制調和国際会議(ICH)のStep 5(ICH S5 R3)の試験戦略に代替法の記述が追加された。ただし、生殖発生毒性における奇形/胚/胎児毒性(Malformation or Embryo-Fetal Lethality, MEFL)を適正に予測する新規アプローチ法として、推奨されている試験法の記載はない。以上のような状況下、医薬品のみならず、化学物質の安全性評価に対応できる代替法の開発が世界的にも急がれている。

本発表では上記の状況を鑑み、我々はMEFLの有害性発現(AO)を検出できる遺伝子を検索するため、代表的な被検物質の1つであるThalidomideをヒトiPS細胞にばく露し、遺伝子発現が変化する候補遺伝子から標的となる遺伝子を選出した。次にこの遺伝子の発現変化をモニターできるルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒトiPSレポーター細胞株を作出した。この細胞株を用いて、Thalidomideと代表的な生殖発生毒性試験における陽性物質であるValproic acid sodium(VPA)、および陰性物質であるD-Mannitolのばく露実験を行い、ThalidomideとVPAのばく露による影響を検出することができた。

現在、このレポーター細胞株を用いて、ICH S5 R3で表記された物質のばく露実験を行っており、新たな生殖発生毒性を評価できる動物実験代替法の確立にむけた取り組みを報告する。

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