日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: O2-08
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一般演題 口演 2
活性酸素種からヒト治療抵抗性胃がんに至る有害性発現経路(AOP298)の開発
*田邊 思帆里カデール サビーナ小野 竜一カブラル オラシオ青柳 一彦広瀬 明彦パーキンス エドワード横崎 宏佐々木 博己
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抄録

上皮間葉転換やがん幹細胞はがんにおける治療抵抗性に関与し、その分子特性を共有している。上皮間葉転換は、上皮系から間葉系への細胞の特性変化であり、ヒト胃がんにおけるがん幹細胞様の特性を示す。がんの悪性化と治療反応性を担う分子ネットワークを明らかにするために、治療抵抗性を呈するびまん型胃がんと腸型胃がんにおける遺伝子発現及び分子ネットワークに関してIngenuity Pathway Analysis(IPA)を用いて解析した。また、損傷や慢性的活性酸素種は、ヒト治療抵抗性胃がんを引き起こす。活性酸素種は、がんの発症・進展、抗腫瘍作用を引き起こすアポトーシス誘導等の多様な役割を有している。これまでに、慢性的活性酸素種からヒト治療抵抗性胃がんに至るAdverse Outcome Pathway(AOP;有害性発現経路)をAOP298としてOECDプロジェクトにて開発し、レビューと国際コンソーシアムでの調和を経てAOP298を改訂した。現在、AOP298はMolecular Initiating Event(MIE;分子開始イベント)としてKE1940:細胞内活性酸素種の上昇及びKE1753:慢性的活性酸素種、Key Event(KE;主要イベント)1としてKE1754: porcupine誘導Wnt分泌及びWntシグナル活性化、KE2としてKE1755:β-カテニン活性化、KE3としてKE1650:上皮間葉転換、Adverse Outcome(AO;有害性発現)としてKE1651:治療抵抗性胃がんから構成されている。AOP298では、上皮間葉転換はWnt/β-カテニンシグナル伝達によって誘導されることから、Wnt分泌とβ-カテニン活性化をそれぞれKE1とKE2として有しており、ヒト胃がんにおける治療抵抗性を誘導する持続的なレベルを有する慢性活性酸素種の役割に焦点をあてている。

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