日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-042E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 2
自然言語処理AIを使った仮説生成の薬剤性肝障害の新規影響因子探索への応用
*高木 優奈酒井 幸松本 崇西條 英里宮本 実豊柴 博義
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抄録

背景: 薬剤性肝障害(DILI)の発症は様々な因子に影響されるため予測が非常に困難である。DILIに影響を及ぼす因子の探索には着目すべき因子を見出す仮説生成が欠かせない。自然言語処理AIは膨大なテキスト情報の網羅的かつ客観的な解析や言葉同士の演算を可能とし、近年創薬標的探索における仮説生成に活用されている。本研究ではDILIと遺伝子の関係に注目し、仮説生成の観点からAIのDILI影響因子探索への適用可能性を検討した。

方法: Liver Toxicity Knowledge Base DILIrank datasetに含まれる1036 FDA承認薬と約2万ヒト遺伝子についてAIを使いベクトル化した。ブートストラップ法を組み合わせたロジスティック回帰モデルを作成し、モデルの出力結果をDILIスコアと定義した。DILIスコアの高い141の薬剤と約2万遺伝子の合算ベクトルから算出したDILIスコアが、薬剤単独のスコアより低くなる遺伝子に着目し、薬剤横断的に共通する遺伝子を抽出した。

結果と考察: DILIスコアが0.5以上を肝毒性ありとした。DILI懸念の高い薬剤(Most-DILI)において、薬剤単体で肝毒性ありと判断されたにも関わらず、遺伝子ベクトルと合算した場合にDILIスコアが明確に低下するケースがあった(141件、89%)。これらDILI懸念の高い薬剤に共通する遺伝子は219個であった。DILI スコアの低下に関与しているであろう遺伝子のクラスター解析を実施したところ、異物代謝、タンパク質脱リン酸化、ERストレス応答、miRNA介在遺伝子サイレンシングなどと関連が深い遺伝子が薬剤横断的に認められ、DILIとの関連報告のない遺伝子も含まれていた。今回の検討から、自然言語処理AIはDILI影響因子探索においてこれまでにない仮説を検証する機会を提供する可能性があると考えられた。

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