日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-050S
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学生ポスター発表賞 応募演題
カドミウム誘導性ヒアルロン酸合成促進におけるHAS3の関与
*白井 美咲原 崇人鍜冶 利幸山本 千夏
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抄録

【目的】カドミウムは環境中に存在し,我々が食事や喫煙などを通じて非意図的に曝露するだけでなく,血管内腔を覆う内皮細胞の機能障害を引き起こす動脈硬化症のリスク因子である。内皮細胞の表面にはN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸から構成されるヒアルロン酸(HA)が存在し,1000 - 2000 kDaの大型HAと100 kDa程度の小型HAが3種のHA合成酵素(HAS1-3)によって作り分けられる。動脈硬化病変部においてもHAが蓄積することが報告されており,HAがカドミウムによる動脈硬化の発症や進展に寄与すると推察される。しかしながら,内皮細胞のHA合成に対するカドミウムの影響は明らかとなっておらず,本研究ではその解明を試みた。

【方法】ウシ大動脈内皮細胞にカドミウムを処理した。mRNA発現は定量的RT-PCR法,タンパク質発現はウェスタンブロット法,HAの合成量はHA定量キット,HAの特性は細胞を[3H]グルコサミンで標識した後にDEAE Sephacel陰イオン交換およびSepharose CL-4B/6Bゲルろ過クロマトグラフィーで分離することで解析した。

【結果および考察】内皮細胞において,カドミウムはJNK-c-Jun経路を介したHAS3の特異的な発現誘導によりHA合成を促進させることが明らかとなった。3種のHA合成酵素のなかで唯一小型のHAを合成するHAS3は初期の動脈硬化病変部において強く発現誘導され,小型のHAによる血管新生および炎症反応の促進も報告されている。また,動脈硬化病変部ではマクロファージやTリンパ球の集積が認められ,内皮細胞におけるHA合成の亢進はHA受容体CD44依存的に炎症部位へのマクロファージおよびTリンパ球を動員する。以上より,カドミウムによる内皮細胞のHAS3の誘導は,炎症性変化の増強を通じて動脈硬化病変の発症と進展に寄与すると考えられる。

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