日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-052S
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学生ポスター発表賞 応募演題
カドミウム-メタロチオネイン複合体曝露による腎障害後の骨組織への影響の解析
*山中 智貴山本 勝也石田 慶士松丸 大輔宮崎 航中西 剛
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抄録

【背景】カドミウム(Cd)は生体蓄積性の高い環境汚染物質であり、慢性曝露によりイタイイタイ病に代表される骨軟化症を引き起こすことが知られている。その発症機序は慢性曝露による腎障害を介して誘導されると考えられているが、げっ歯類を用いた病態モデル動物の作成が困難とされており、現在も不明な点が多い。一方でCdは、生体内でメタロチオネイン(MT)と結合し、この複合体(Cd-MT)が近位尿細管を障害することが知られている。またイタイイタイ病は、閉経後の女性で多く認められることが報告されている。そこで本研究では、閉経後モデルとして卵巣摘出術(OVX)を実施したマウスに対して、Cd-MT投与を行うことで腎障害を誘導した病態モデルを作成し、骨に及ぼす影響やヒト病態との類似性に関する検討を行った。【方法】8週齢メスのC57BL/6NマウスにOVXを行い、1週間後に0.3 mg Cd/kgのCd-MT混合溶液を単回尾静脈投与した。Cd-MT混合溶液の投与12週間または24週間後に安楽死させ臓器を回収し、腎臓と大腿骨の組織学的解析を行った。また、大腿骨はX線μCTによる3次元解析を行い、骨密度と骨量を測定した。【結果】Cd-MT投与12週間後、24週間後のいずれにおいても、腎臓のボーマン嚢の肥大がみられた。このことから腎障害が生じていることが確認された。大腿骨骨密度及び骨量については、Cd-MT投与12週間後では有意な変化は生じなかったが、24週間後ではCd-MT投与群の骨量が溶媒対照群と比べて有意に減少していた。OVXによっても骨量の減少はみられたが、Cd-MT曝露による骨組織への相加的な影響はみられなかった。【結論】Cd-MTの単回投与により腎障害に加えて骨量の減少が生じていたことから、マウスにCd-MTを投与することで、ヒトのCd慢性毒性と類似した病態モデルを作成できる可能性が示された。

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