日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-078S
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学生ポスター発表賞 応募演題
妊娠期甲状腺機能低下による甲状腺関連パラメータの変動と胎仔発生への影響評価
*糟谷 佐保里目加田 京子小泉 茉奈海石田 慶士松丸 大輔村嶋 亜紀諫田 泰成中西 剛
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抄録

【目的】甲状腺機能低下を誘導する化学物質の次世代影響が懸念されている。そのため2018年に甲状腺関連指標の評価がOECDの対象毒性試験ガイドラインに追加された。しかし、化学物質誘導性の甲状腺関連指標の変動レベルと次世代影響との相関については不明な点が多く、化学物質リスク管理のスキームの確立には至っていない。そこで本研究では、様々な程度で母体の甲状腺機能低下を誘導した際の胎仔発生への影響を解析した。【方法】OECD TG414に準じて試験をおこなった。ICRマウスに妊娠6日目から18日目まで抗甲状腺薬であるプロピルチオウラシル(PTU)を0、2、10、50、250 ppmの濃度で混餌投与し、妊娠18日目に剖検を行った。母動物では、血清甲状腺関連ホルモンの測定および甲状腺組織学的解析を行い、胎仔では外表検査・内臓検査・骨格検査を行った。【結果】母動物においては、50、250 ppm投与群でT3、T4の低下とTSHの上昇が認められ、典型的な甲状腺機能低下状態であることが確認された。また甲状腺組織解析においても50、250 ppm投与群で甲状腺の色調変化とコロイドの欠失が観察された。さらに濾胞細胞の肥厚については、50、250 ppm投与群に加えて、血中甲状腺関連ホルモンに変化が生じていない10 ppm投与群においても観察された。一方で胎仔においては、外表検査、内臓検査および骨格検査で、いずれの用量においてもPTU投与による影響は認められなかった。【考察・結論】妊娠期の甲状腺機能低下は、組織学的手法を用いることで血中甲状腺関連ホルモンの変化より鋭敏に検出することができる可能性、そして妊娠期の甲状腺機能低下は胎仔期の臓器形成や骨格形成には影響を与えない可能性が示唆された。本研究成果は、甲状腺機能低下を誘導する化学物質のリスク管理において有益な情報となることが期待される。

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